頭を打った場合、最初の24時間の観察が大切ですが、特に急性頭蓋内出血の発症の場合には、外傷直後から4~5時間の間に意識状態に変化をきたします。皮下血腫や頭部挫傷を合併する場合は勿論の事、外観が問題ない場合でも、生命に重大な影響を及ぼす事がありますので、外傷の後で心配な場合は脳神経外科専門医の診察を受ける事をお勧めいたします。
頭を打つのは一般的には、転倒しやすい1歳から3歳までの幼児と高齢者に多い特徴が有ります。幼児では3歳まで頭と躯幹とのアンバランスがあり転びやすい様です。
頭を打った後に経過を見る場合には、次の様な事項に注意しましょう。①意識状態はどうか?幼児の場合は不機嫌ではないか?②頭痛はないか?③吐き気や嘔吐はないか?④手足のしびれ感や麻痺はないか?等です。
また、当日は出来るだけ安静にして、お風呂へ入る事を控えましょう。脳圧が上昇して吐き気をもよおす事があります。また、アルコールや刺激の強い食べ物も控えましょう。
最後に、50歳以上の男性でお酒をたしなまれる方に多いのすが、頭を打った後3週間~2ヶ月程度の間に徐々に進む、認知症、運動麻痺、尿失禁が出現した場合は、慢性硬膜下血腫の発症を疑って再度受診して下さい。最近では、漢方薬や手術で上記の症状は回復します。一般的に治る認知症と言われています。なお、著者の経験では35歳の女性で、頭を打った1ヶ月後に慢性硬膜下血腫を発症された方がいますので、必ずしも、50歳以下は大丈夫と言う訳ではないようです。
東日本大震災は、世界最大級のマグニチュード9以上の大地震が起こり、その直後の津波で原子力発電所を壊滅状態にするわが国史上最大の天災となりました。破壊された市街地や、原子力発電所の一日も早い復興をお祈りすると供に、この天災で亡くなられた方々に黙祷を捧げたいと思います。
最近、未だ未解決の原子力発電所からの放射能の人体に与える影響が、マスコミを中心に取り沙汰されています。目に見えない放射能はとても恐いものです。特に、私の地元の広島市では、原子爆弾の残した爪あとが残っており、何ともやるせない気持です。
医療の現場でも、放射線とは無縁ではありません。ここで実際に医療で使われている各種先端機器の放射線について述べてみたいと思います。
今、医療で使用されている放射線はX線からの照射で、その線量の単位はミリグレーです。最近、よくテレビ等で耳にするミリシーベルトは、X線の他、α線、中性子線、電子線からの色々な照射線量を統合して使う単位です。なお、大切な事は線源により体に与える影響が異なる為、ミリグレーとミリシーベルトを統一に考える事が出来ないと言うことです。ここでは、X線から放出される線量(ミリグレー)について述べます。
当院では頭部MRI、頭部CT、各種一般撮影を行っています。MRIは御存知の様に、正式名称はMagnetic resonance imaging(磁気共鳴機器)の略語で磁石を使用して撮影している為、放射線の放出はなく人体には無害と考えられています。実際、お母さんのお腹の中の胎児の健康診断に使用しているほど安全な機器です。
頭部CTについて、大人が検査を受けた場合、脳には50~70ミリグレーの影響がありますが、神経組織は放射線に強い組織ですから、問題ありません。また甲状腺や生殖細胞(精子や卵子)の被曝はゼロで不妊症や遺伝的影響はありません。なお、将来白内障になる可能性もありません。
子供は、転倒事故などでよく頭部CT(10~18ミリグレー)を受けます。その場合の影響でも、脳腫瘍や白血病になる可能性はありません。不妊症や遺伝的影響も心配ありません。
妊娠中の方(妊婦)では、CT検査は線量が多いため胎児の被曝が問題になりますが、骨盤が含まれる以外の部位では問題なりません。
X線撮影(一般撮影)はCT検査と比較して、はるかに少ない線量ですから、人体に対する影響はありません。
以上、現在日常で使用されている医療機器は、使用方法を適切にまもれば、人体に対する影響はない物と考えて差し支えありません。
一般的には、くも膜下出血は女性に多い疾患と言われています。しかし、一方では働き盛りの男性の重要な疾患として、昔からよく知られています。
実は、昨日知人の知り合いの43歳の男性が、くも膜下出血で倒れられた様です。容態は、重症で予断を許さない状態の様です。ご家族は奥様とまだ幼い2人の子供さんがおられます。知人の話では、その方は営業の第一線でご活躍されており、会社の検診では、高血圧症が少しあり、頭痛もなく、日頃からアルコールの量も多かったみたいです。また、その方の口癖は、体には自信があると日頃から周囲に豪語されていた様です。
この様な方のお話をお聞きするたびに、脳の検診の重要性を再確認する毎日ですが、「倒れてからでは遅い」と一方では声を大にして言いたいです。特に男性は、私も含めて恐がりで、自分に限っては大丈夫と思いがちです。脳の精密検査は決して恐くなく、痛くもない検査です。「脳の検診で、幸福な家庭を崩壊から救えると思えば簡単な事ではないか」と皆さんに再認識して頂きたいと強く思った昨日でした。
当院では、毎日20名以上の方のMRIやCT検査を行っています。最近立て続けに3人の方の検査結果で、特に印象的で検査の大切さを肝に銘じた経験を致しましたので、個人情報保護法にのっとり差しさわりのない程度にご紹介します。
一人目の方は、脳ドックで来院された30歳代の女性です。自覚症状は目の奥に少し違和感がある程度で、後で眼科へ受診して頂いた結果からも視野も視力にも問題ない方です。MRI検査で視神経交叉(目から6cm程度奥の部位)に1.5cmの良性腫瘍を認めました。画像診断以外のホルモン検査と眼科の検査から異常ない為現在経過を診ています。
二人目の方は、お母さんが以前に脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血で手術をされた30歳代男性の方です。軽い頭痛で来院され、MRA検査で長径5mmほどの未破裂脳動脈瘤が見つかりました。患者さんと相談の上某総合病院脳神経外科で手術を受ける事になりました。
三人目の方は、40歳代の女性で朝から半身の軽いしびれ感と頭痛を自覚され来院。頭部CT検査で小さな脳内出血を認めました。幸いその後出血の拡大はなく、降圧剤で経過観察中です。御家族に脳卒中の方がおられ、御自身も数年間血圧が高い事はご存知でしたが、仕事が忙しく放置されていました。
この様に軽い頭痛症状でも、時に重い病気が隠れている例もあります。我々脳神経外科専門医も、診察室での診察だけでは診断が困難な例があり、改めて画像検査の重要性を再認識した次第です。