頭部外傷について
- 2008年01月22日
- 院長コラム
- 頭部は外側から頭皮、帽状腱膜、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳の順に構成されています。頭部を強打し、不幸にして前記の部位に出血を起こした場合にそれぞれ重大な問題となります。頭部外傷のメカニズムを検討すると①直達外力による外傷と②回転角加速度によるものがあります。①の代表例が頭皮下血腫、帽状腱膜下血腫や骨膜下血腫(いわゆるタンコブ)、頭蓋骨骨折、硬膜外血腫があります。②の代表例が硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷等があります。回転角加速度による外傷とはバイクの転倒、柔道やスノーボードによるものです。
頭皮および頭皮下損傷:頭皮の外傷には皮膚の連続性が保たれる擦過傷と、連続性が断たれる挫傷、裂傷があります。頭皮下の出血(タンコブ)は頭蓋骨の外側の外傷ですが、重症の外傷でもタンコブを伴っている場合が多く、タンコブがあるから安全とは言い切れません。頭部打撲の場合は頭部CT等の精密検査がやはり必要です。 - 頭蓋骨骨折:線状骨折と陥没骨折に分類されます。鈍的な外傷で線状骨折ができ、比較的鋭的な外傷(打撲面積が少ないもの)で陥没骨折が起こります。
- 硬膜外血腫:側頭部を強打する事で骨折に伴い中硬膜動脈の破綻が出血源で起こります。通常症状は短時間で悪化しますが、手術により完全回復が期待できます。時間との勝負です。
- 硬膜下血腫:脳挫傷によって脳表の動脈や静脈が破綻する事で起こります。受傷直後から意識障害が起こります。また小児の虐待の頭部外傷では最も頻度が高い疾患です。機能および生命予後は合併した脳挫傷の程度により異なります。
参考:慢性硬膜下血腫ー外傷3週間から3ヵ月後に痴呆症、運動麻痺、尿失禁等の症状が出現する疾患です。受傷当初は頭部CTで異常なく、その後徐々に血腫が形成されて症状が出現します。また高齢者の場合、約50%の方に外傷の既往歴がない方がおられます。この疾患は治る可能性のある痴呆症状の一つですので、検査をし手術をすると機能予後は良好です。 - 外傷性くも膜下出血:くも膜下腔の静脈からの出血や、脳室内や脳内出血からの進展で起こります。くも膜下出血単独の場合は、予後は良好な例が多いようです。
- 脳挫傷:前頭葉や側頭葉に多く、後頭葉に頻度が少ないようです。脳挫傷の部位や程度で予後が左右されます。
★小児の頭部外傷の特徴
- 陥没骨折が多い。
- 軽微な外傷から硬膜下血腫が出来やすい。
- 軽微な外傷でも嘔吐を来しやすい。
- 頭蓋内血腫例で貧血を来しやすい。
- 回復は良好の事が多い。
- 外傷性癲癇を来しやすく、脳波異常が多い。
★老人の頭部外傷の特徴
- 外傷に比べ機能および生命予後が不良。
- 脳振盪が少ない。
- 脳挫傷を起こしやすい。
- 身体の合併症が多い。
- 軽微な外傷で性格変化や認知症を進行させる。