頭部外傷による高次機能障害
- 2009年04月14日
- 院長コラム
頭部外傷による高次機能障害(認知症)
頭部外傷が原因で高次機能障害を引き起こす為には次の3要素が一般的には必要です。
(ア)頭部外傷によって、脳に対する強い外力が加わり、その結果、画像で脳の萎縮や脳室の拡大が認められること。
(イ)意識障害が一定期間持続すること。
(ウ)外傷後の人格の変化、知能低下が顕著なこと。
仮に、上記(ア)を欠いている様な受傷直後の頭部CTやMRIが異常なく、後に高次機能障害を引き起こす様な状態とは、やや特殊な例として画像所見では一見正常と思われるび漫性軸索損傷の状態があります。このび漫性軸索損傷とは、直接に外力が頭部に加わる脳挫傷と違い、間接的な外力が特に回転加速度的に加わる事で、脳全体特に脳深部の神経組織(軸索や血管)にいわゆる歪みが生じる事が外傷機転と考えられています。このため、例え画像所見で異常がない状態【軸索(脳神経細胞同士の連絡網)の異常は画像所見では描出が不可能の為】でも、頭蓋内は深部を中心としてダメージが強く、このため意識障害等の脳全般の臨床症状が起こります。
このびまん性軸索損傷で、臨床例をあげるなら、最軽症型が脳振盪であり、最重症型が外傷後植物状態です。また、日常診療で見かける脳振盪(一般的には数秒から数分の意識障害)の症例が後に高次機能障害を引き起こした症例の経験は私にはありません。
従って高次機能障害を引き起こす程の頭部外傷の場合は、受傷時には脳振盪よりもより重症な意識障害が不可欠と考えます。