脳梗塞とEPAについて
- 2010年03月16日
- 院長コラム
必須脂肪酸とは、体内で作ることのできず食事で摂取し、生きていく上で必要不可欠なものです。この必須脂肪酸の中で、最近話題のものとして、主に魚の油から抽出される不飽和脂肪酸と、植物の油から抽出される不飽和脂肪酸があります。青魚に含まれているEPA(イコサペント酸)は、不飽和脂肪酸の一つで、体内の炎症や動脈硬化を抑制する働きがある事が知られています。EPAの働きについては、エスキモーとデンマーク人は、どちらも高脂肪食を好む人種ですが、青魚を多く摂取するエスキモーの心筋梗塞の発症率が圧倒的に少ない事から、EPAが動脈硬化抑制に作用している事が証明されています。
また、植物性脂肪に含まれている不飽和脂肪酸の、AA(アラキドン酸)は逆に炎症や動脈硬化を促進させる働きがあります。1960年代以降、日本人における脳梗塞や心筋梗塞の死亡率が急激に上昇した原因は、動物性脂肪(飽和脂肪酸)の過剰な摂取とともに、植物性脂肪(不飽和脂肪酸)の摂取量の増加が原因と考えられています。更に、この中でも善玉のコレステロール(HDL)が低い人は、脳梗塞の発症率が著しく高い事が知られています。HDLは治療により改善しにくいのですが、このHDLが低い方の脳梗塞の発症を抑える事に、EPA摂取が有効であったとする報告が最近発表されました。また、青魚のEPAの含有率は、多い順から鯖、マグロ、鰯、はまち、ぶり、さんまの順ですが、実際の問題として、これらの魚をほぼ毎日摂取する事は困難です。
この為、EPAを薬として摂取する事でこの問題は解決します。EPA摂取で、脳梗塞の発症を押さえることができますが、最近はこのEPAの値を直接測定する事で、EPAの摂取量が適切かどうかを判断できるようになりました。