頭部外傷、けいれん、てんかん
- 2012年02月10日
- 院長コラム
先日、頭部外傷後6年経過した患者さんが意識消失発作の精密検査の目的で来院されました。患者さんは、70歳代の男性で、6年前の交通事故で約2ヵ月間の意識障害があったようです。当院の頭部MRIでは異常はありませんでしたが、外傷以前にてんかんの治療歴はなく、脳波で光刺激の後に、てんかんに特有の棘波(きょくは)=てんかん波を認めた為、外傷性てんかんと診断しました。
外傷が原因のけいれん発作は、受傷直後~24時間までの直後けいれん、受傷1週間から1ヶ月の早期けいれん、受傷1ヶ月以上経過した後に起こる晩期けいれんに分類されます。受傷直後のものは、脳の細胞レベルの電解質の異常や、酸欠状態等の全身障害により起こり、早期に改善し、てんかんへの移行は少ないようです。一方、晩期けいれんは外傷性てんかんに移行する可能性が高いようです。
外傷性てんかんに移行しやすい要因としては、開放性脳挫傷、髄膜炎、今回の患者さんの様に重症頭部外傷(遷延性記憶障害)、早期けいれんがあります。
てんかんの形は全般性発作が多く、部分てんかんは少ないようです。治療は一般的なてんかんに準じて行います。
※けいれんとは、全身あるいは一部分がけいれんする病態で通常脳波やMRIで異常がないもの。
※てんかんとは脳波で異常を認め、けいれん発作を認めるもの。