認知症とその予防法
- 2016年02月19日
- 院長コラム
認知症は一度正常に発達した認知機能が後天的は脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす様になった状態です。この疾患は、現在要介護者になった方の10%以上を占め2020年には国民の8.9%に相当する患者数になると予想されています。また現在85歳の25%、90歳の半数の方が認知症になっているとの報告もあります。この為、認知症になる前の予防が必要になっています。
認知症の診断には画像診断と臨床診断の両面からの相互診断で行われています。具体的には、頭部MRIで両側海馬の萎縮の程度と、認知症の質問表で判断します。一度認知症と診断されると現時点では完全治癒が困難な為、予防薬でその進行を停止させます。一般的には5~10年間で予防薬に慣れが生じ、効き目がなくなり更に認知症は進行します。この為、いかに早期に認知症前状態(正常と認知症の間の状態)を発見するかが問題となります。御自身及び家人の方が少しでも記憶力が落ちていると思われた場合は、直ちに最寄りの専門医療機関で診断を受けることをお勧め致します。また最新の診断法では、脳に沈着し認知症の発症原因となるアミロイドβペプチドを採血によって測定し、将来認知症になるかどうかの可能性の研究も進められています。
更に日頃から認知症の事に興味を持って健常のうちに予防に努める事が重要です。認知症の危険因子として分かっているものは、女性、頭部外傷、メタボリックシンドローム、喫煙、過度の飲酒、運動不足、無趣味、対人交流の減少があげられます。性別の女性である事は、平均寿命が長い事がその一因と考えられます。頭部外傷はある程度避けられない事ですが、その他の危険因子は積極的に回避すべきです。
メタボリックシンドロームの予防に関しては、魚やオリーブオイルを中心とした地中海式の食事が認知症予防に有効である報告があります。喫煙に関してはタバコ1本から危険率が高まります。また5年間禁煙を行えば危険性はほぼゼロになると言われています。ぜひ禁煙に努めましょう。また古くから言われている事ですが、チェスや読書、クロスワード等の知的活動や、散歩、水泳等の身体活動が予防には有効です。
最後に、規則正しい生活をして和やかな人間関係を構築し、何時までも仲間や異世代の人との会話を持つ事が重要な予防法と思われます。