未破裂脳動脈瘤
- 2007年09月14日
- 院長コラム
MRIで認められる血管の瘤(こぶ)を脳動脈瘤と呼びます。まだ破裂をしてないものを未破裂脳動脈瘤と呼びます。色々な統計から全人口の約5%すなわち日本人全体で500万人の方が未破裂脳動脈瘤を持っておられる計算になります。従ってこの疾患は決して珍しいものではありません。また、脳動脈瘤は通常急に出来るものではなく数年間の間に出来たり或いは先天的に脳動脈瘤をもっておられる方のいるようです。動脈瘤の破裂率や自然歴についてはまだ充分に解明されてない部分もありますが、一般的に動脈瘤の大きさが5~7mm大以上の場合1年間に約0.5%の方(200人に一人)が破裂すると考えられています。この数が決して多い数字ではありません。ですからたとえ脳動脈瘤が見つかっても直ちに破裂を防止する治療法を考えるのではなく、この病気の状態や治療方法をじっくり医師に相談をされ今後の治療法や予防法を考える事が重要です。
しかし動脈瘤が一旦破裂した場合、例え破裂後に手術が成功しても3人に1人の方しか社会復帰出来ないと言われています。残りの2人の方は重い後遺症がのこるか最悪死亡される事もありえます。
この疾患はお薬で治療はできません。従って治療法は手術になります。現在行なわれてる手術法はクリッピング法とカテーテルを使用するコイル法の2通りの方法があります。クリッピング法は従来より行なわれてる方法で全身麻酔下に頭蓋骨を開けて脳と骨の隙間から動脈瘤に接近して動脈瘤の根元に丁度洗濯場バサミの小さい様な形のクリップで根元を遮断する方法です。またコイル法は足の根元の股動脈からカテーテルを挿入して血管の中から動脈瘤に接近する方法で動脈瘤の内部にコイルを充填する事で破裂を防止する事が出来ます。この方法はコイルの成分の問題からまだ充分に確立した方法ではありませんが、患者さんの肉体的な負担度からその適応が拡がりつつあります。どちらの方法も長所及び短所がありますので主治医の話をじっくり聞かれ判断される事が大切です。
最後に破裂率を下げる基本的な方法はありませんが血圧が高くなったり喫煙をすると動脈瘤が拡大したり破裂したりする危険性が高くなりますので、経過観察の場合は血圧の治療と禁煙が重要となります。