てんかんの恐ろしさーその注意点


てんかんとは、脳のある焦点の電気生理学的な異常興奮で、意識が一瞬なくなるものから、ひどい場合倒れて無意識に様々な手足の運動を起こす疾患の相称です。てんかんの患者さんの頻度は、全人口の0.9%すなわち全国で900万人の患者さんがおられる計算になり、決して頻度の低い疾患ではありません。患者さんは、この発作の間(数秒~数分間)意識がなく、その記憶もありません。脳波の検査では、発作中にてんかん波を認め、発作以外の時にも異常を認める場合があります。
てんかんの原因は、脳腫瘍や血管奇形等がある場合を症侯性てんかんと呼び、てんかんの原因がMRIやCTでも異常ない場合を特発性てんかん(原因不明)と呼んでいます。特発性てんかんは、小児期より発症する事が多い様ですが、最近は青年期や壮年期、つまり大人になってから初めて発症される方も増えています。このタイプのてんかんは、全く原因が不明で、この様な患者さんの中で薬に効き難い場合には、大変長期間の治療が必要となります。
治療法は、症侯性てんかんの場合は、原因となっている腫瘍や血管奇形を摘出し、ある一定期間(3~5年)発作がなく、脳波が正常になれば薬をやめる事が可能です。一方、特発性てんかんの場合原因が不明の為、薬物療法が中心となります。薬は抗けいれん剤と言いますが、薬の効果持続時間が6時間から24時間で薬の種類によって決まっており、毎日欠かさず服用する事が大切です。また、1種類の抗けいれん剤で効き目がない場合には、複数(2種類~それ以上)の薬物で発作を抑えます。この場合、どのタイプのてんかんで、どのような薬が効果的かを考えながら、特に難治症例の場合は、絵合わせの様に薬の組み合わせを考える事が必要です。その結果、薬が有効であれば、発作は消失します。その後内服薬の服用を継続し、5年間発作が消失すれば徐々に薬を減量しながら薬の服用が止めれます。この間に、テレビゲーム、パチンコ等の過度の目への刺激や睡眠不足、お酒の飲み過ぎ等で発作が起こりやすくなるので、特に細心注意が必要です。また、一人で海水浴に行く事や車の運転は出来ません。
最後に、てんかんは薬を適切に服用すれば、軽度の発作から全く消失する程度までの改善が可能です。また、てんかんを治療せず長期にわたり放置した場合、特に全身けいれんでは脳の低酸素状態から認知症になった方もおられます。ぜひ適切な治療法を当院で受けて頂くことをお勧め致します。

 

子供が頭を打った時は?


頭を打った場合、最初の24時間の観察が大切ですが、特に急性頭蓋内出血の発症の場合には、外傷直後から4~5時間の間に意識状態に変化をきたします。皮下血腫や頭部挫傷を合併する場合は勿論の事、外観が問題ない場合でも、生命に重大な影響を及ぼす事がありますので、外傷の後で心配な場合は脳神経外科専門医の診察を受ける事をお勧めいたします。
頭を打つのは一般的には、転倒しやすい1歳から3歳までの幼児と高齢者に多い特徴が有ります。幼児では3歳まで頭と躯幹とのアンバランスがあり転びやすい様です。
頭を打った後に経過を見る場合には、次の様な事項に注意しましょう。①意識状態はどうか?幼児の場合は不機嫌ではないか?②頭痛はないか?③吐き気や嘔吐はないか?④手足のしびれ感や麻痺はないか?等です。
また、当日は出来るだけ安静にして、お風呂へ入る事を控えましょう。脳圧が上昇して吐き気をもよおす事があります。また、アルコールや刺激の強い食べ物も控えましょう。
最後に、50歳以上の男性でお酒をたしなまれる方に多いのすが、頭を打った後3週間~2ヶ月程度の間に徐々に進む、認知症、運動麻痺、尿失禁が出現した場合は、慢性硬膜下血腫の発症を疑って再度受診して下さい。最近では、漢方薬や手術で上記の症状は回復します。一般的に治る認知症と言われています。なお、著者の経験では35歳の女性で、頭を打った1ヶ月後に慢性硬膜下血腫を発症された方がいますので、必ずしも、50歳以下は大丈夫と言う訳ではないようです。

 

 

放射線検査に対する体への影響


東日本大震災は、世界最大級のマグニチュード9以上の大地震が起こり、その直後の津波で原子力発電所を壊滅状態にするわが国史上最大の天災となりました。破壊された市街地や、原子力発電所の一日も早い復興をお祈りすると供に、この天災で亡くなられた方々に黙祷を捧げたいと思います。
最近、未だ未解決の原子力発電所からの放射能の人体に与える影響が、マスコミを中心に取り沙汰されています。目に見えない放射能はとても恐いものです。特に、私の地元の広島市では、原子爆弾の残した爪あとが残っており、何ともやるせない気持です。
医療の現場でも、放射線とは無縁ではありません。ここで実際に医療で使われている各種先端機器の放射線について述べてみたいと思います。
今、医療で使用されている放射線はX線からの照射で、その線量の単位はミリグレーです。最近、よくテレビ等で耳にするミリシーベルトは、X線の他、α線、中性子線、電子線からの色々な照射線量を統合して使う単位です。なお、大切な事は線源により体に与える影響が異なる為、ミリグレーとミリシーベルトを統一に考える事が出来ないと言うことです。ここでは、X線から放出される線量(ミリグレー)について述べます。
当院では頭部MRI、頭部CT、各種一般撮影を行っています。MRIは御存知の様に、正式名称はMagnetic resonance imaging(磁気共鳴機器)の略語で磁石を使用して撮影している為、放射線の放出はなく人体には無害と考えられています。実際、お母さんのお腹の中の胎児の健康診断に使用しているほど安全な機器です。
頭部CTについて、大人が検査を受けた場合、脳には50~70ミリグレーの影響がありますが、神経組織は放射線に強い組織ですから、問題ありません。また甲状腺や生殖細胞(精子や卵子)の被曝はゼロで不妊症や遺伝的影響はありません。なお、将来白内障になる可能性もありません。
子供は、転倒事故などでよく頭部CT(10~18ミリグレー)を受けます。その場合の影響でも、脳腫瘍や白血病になる可能性はありません。不妊症や遺伝的影響も心配ありません。
妊娠中の方(妊婦)では、CT検査は線量が多いため胎児の被曝が問題になりますが、骨盤が含まれる以外の部位では問題なりません。
X線撮影(一般撮影)はCT検査と比較して、はるかに少ない線量ですから、人体に対する影響はありません。
以上、現在日常で使用されている医療機器は、使用方法を適切にまもれば、人体に対する影響はない物と考えて差し支えありません。

 

昨日はびっくりしました。あなたの旦那様は大丈夫ですか?


一般的には、くも膜下出血は女性に多い疾患と言われています。しかし、一方では働き盛りの男性の重要な疾患として、昔からよく知られています。
実は、昨日知人の知り合いの43歳の男性が、くも膜下出血で倒れられた様です。容態は、重症で予断を許さない状態の様です。ご家族は奥様とまだ幼い2人の子供さんがおられます。知人の話では、その方は営業の第一線でご活躍されており、会社の検診では、高血圧症が少しあり、頭痛もなく、日頃からアルコールの量も多かったみたいです。また、その方の口癖は、体には自信があると日頃から周囲に豪語されていた様です。
この様な方のお話をお聞きするたびに、脳の検診の重要性を再確認する毎日ですが、「倒れてからでは遅い」と一方では声を大にして言いたいです。特に男性は、私も含めて恐がりで、自分に限っては大丈夫と思いがちです。脳の精密検査は決して恐くなく、痛くもない検査です。「脳の検診で、幸福な家庭を崩壊から救えると思えば簡単な事ではないか」と皆さんに再認識して頂きたいと強く思った昨日でした。

 


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脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)の予防・早期診断や脳ドック頭痛外来めまいしびれの症状でお困りの方は広島市中区の山村クリニック(脳神経外科、神経内科、放射線科)へお越し下さい。