めまいー脳は大丈夫ですか?メニエールですか?


めまいの原因は①椎骨脳底動脈循環不全症又は②発作性頭位めまい症であるが場合が圧倒的に多い様です。一方、「めまいと言えばメニエール」とよく言われているメニエール病は、一般受診の患者さんの中での頻度は0.6%程度です(中山2005)。従って、めまいの原因がメニエール病である可能性は、極めて低い事になります。また、耳の病気が原因のめまいの場合は、突然の耳鳴りや難聴の症状も同時に起こる事が普通です。
上記①場合は、高齢者の方や、ペースメーカーを装着しておられる方がめまいを起こした場合は、まず第一に考えてよい疾患です。この椎骨脳底動脈循環不全症は、体のバランスをとっている脳神経に直接栄養を送っている血管の動脈硬化によりめまいが起こります。この為、将来脳卒中を起こす可能性があり、頭部MRI及びMRA検査は必要と考えます。 また②の発作性頭位めまい症は、美容院等で頭を洗う時や洗濯物を物干しに干す際に起こるめまいの事です。耳石の位置の移動により起こると考えられています。しかし、この様なめまいの場合でも、脳腫瘍が隠れている可能性も否定できません。この為、頭部の精密検査を行い生命に関わるような重大な病気がない事を確定する事が必要です。
以上から、めまいがあり、耳鳴りや難聴等の他の耳の症状を伴わない時には、まずは頭の精密検査が必要です。

 

薬に抵抗感があるのは何故?


薬は、日々進歩しています。当たり前のことですが、新しい薬ほど効果があり副作用が少ないものです。しかし、現状では、薬に対する根強い不信感があり、長期の連用に対する抵抗感がある事も事実です。例えば、安定剤や睡眠導入剤を長期に連用すると、頭が呆けるという迷信がまかり通っています。この事は大変な誤解であり、正しい薬を正しい用法で服用すると決して呆ける事はありません。
この様な誤解をまねく一つの要因として、薬害肝炎や薬害エイズの問題で明らかになった様に、過去の厚生労働省の薬物に関する審査に諸問題があった事は事実です。この為、国民の多くの方は、薬に関しての抵抗感があり、さらにその長期の服用には簡単には解決できない不信感があるようです。また新しい薬に対する厚生労働省の許可をする時期も世界水準から見ると、先進国では圧倒的に遅く、驚く事に世界でも100番目(100ヶ国)以下の順位となることが今や常識になっています。このこと自体、国民にとっては大変な不幸です。何故なら日本で開発された世界に誇れる良薬や、諸外国の優秀な薬(販売前に何度も試験をして安全性の確立した)を発売したあと直ぐに日本では手に入れる事が出来ません。
具体例を挙げると、代表的な認知症のアルツハイマー病の治療薬ですが、日本ではいまだにアリセプト錠しか厚生労働省から認可がおりてないのが現状です。しかし、日本はご存知の様に今や世界一の高齢化社会で、65歳以上の方の13人に一人が認知症と言われています。アリセプト錠も良い薬ですが、諸外国ではそれ以外にも良い薬が認可、実用化され効果を発揮しています。医師会や薬剤師会も、もっと声を大にして状況をお知らせしたいのですが、さまざまな箇所に遠慮がある様です。

今後我々医師が色々な場所で薬の現状について、正確な情報を提供し、少しでも薬に対する抵抗感をなくしていく努力が必要と考えます。

 

くも膜下出血


ジャイアンツの木村拓也コーチ(37)がくも膜下出血により急逝されました。脳神経外科の立場から申しますと、一度脳ドックの検査をしていればと思い大変残念でなりません。改めてお悔み申し上げます。
くも膜下出血の原因は、90%以上が脳動脈瘤の破裂によります。破裂していない脳動脈瘤は、頭蓋内に存在していても全く無症状ですので、破裂してくも膜下出血になって初めてその存在や、病気の重大さに気付きます。また、一旦くも膜下出血が起こってからは、例え手術が成功しても社会復帰できる確率は1/3程度で、大変恐ろしい疾患です。まさに史上最強の疾患と言っても言い過ぎではありません。
このくも膜下出血を防ぐ唯一の方法は、脳ドック(MRI)で破裂する前の脳動脈瘤を見つける事です。くも膜下出血の好発年齢は、50~60歳と言われていますが、木村コーチの様に30歳代でも起こりえる疾患です。事実、私が経験した一番若い患者さんは18歳の学生さんでした。
日頃から血圧が高い方、煙草の本数の多い方(動脈瘤の危険因子です)、身内の方に脳卒中のある方、頭痛をお持ちの方は、ぜひ脳ドックを受けられる事をおすすめ致します。

 

脳梗塞とEPAについて


必須脂肪酸とは、体内で作ることのできず食事で摂取し、生きていく上で必要不可欠なものです。この必須脂肪酸の中で、最近話題のものとして、主に魚の油から抽出される不飽和脂肪酸と、植物の油から抽出される不飽和脂肪酸があります。青魚に含まれているEPA(イコサペント酸)は、不飽和脂肪酸の一つで、体内の炎症や動脈硬化を抑制する働きがある事が知られています。EPAの働きについては、エスキモーとデンマーク人は、どちらも高脂肪食を好む人種ですが、青魚を多く摂取するエスキモーの心筋梗塞の発症率が圧倒的に少ない事から、EPAが動脈硬化抑制に作用している事が証明されています。
また、植物性脂肪に含まれている不飽和脂肪酸の、AA(アラキドン酸)は逆に炎症や動脈硬化を促進させる働きがあります。1960年代以降、日本人における脳梗塞や心筋梗塞の死亡率が急激に上昇した原因は、動物性脂肪(飽和脂肪酸)の過剰な摂取とともに、植物性脂肪(不飽和脂肪酸)の摂取量の増加が原因と考えられています。更に、この中でも善玉のコレステロール(HDL)が低い人は、脳梗塞の発症率が著しく高い事が知られています。HDLは治療により改善しにくいのですが、このHDLが低い方の脳梗塞の発症を抑える事に、EPA摂取が有効であったとする報告が最近発表されました。また、青魚のEPAの含有率は、多い順から鯖、マグロ、鰯、はまち、ぶり、さんまの順ですが、実際の問題として、これらの魚をほぼ毎日摂取する事は困難です。
この為、EPAを薬として摂取する事でこの問題は解決します。EPA摂取で、脳梗塞の発症を押さえることができますが、最近はこのEPAの値を直接測定する事で、EPAの摂取量が適切かどうかを判断できるようになりました。

 


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