認知症とは知的レベルが正常に発達した後に、慢性に知的機能低下症を起こす病態です。認知症の症状を示す疾患は多数ありますが、代表的なものとしてアルツハイマー病、水頭症、慢性硬膜下血腫等があります。中でもアルツハイマー病は、治療が困難で予後も不良の疾患です。この為、痴呆症状を早期に発見する事が重要ですが、それ以上に日頃からアルツハイマー病にならない様に予防する事が重要です。今回、アルツハイマー病を予防する為には、日頃からどの様な生活を送る事が大切か述べたい思います。
アルツハイマー病は1901年ミユヘンの精神科医のアルツハイマー氏が最初に報告した初老期の進行性痴呆症です。現在痴呆症状の原因の第1位と推定されています。ちなみにその総数は65歳以上の方の20~30人に1人と考えられています。アルツハイマー病の危険因子として、加齢、頭部打撲症、知的活動の低下や運動不足等があります。また、最近アルツハイマー病の危険因子として、高血圧症、糖尿病、高脂血症等の脳卒中と類似の危険因子が注目されています。
このアルツハイマー病を予防する為様々な研究が行われていますが、その中で食生活との関係を記述した研究結果では、ビタミンB、C、E群が予防効果ある事が判明しています。この為、これらのビタミン類を緑色野菜で摂取する事が重要と考えられています。また魚の油は認知症を予防する事が知られており、毎日1回魚を食べる場合と比較して、週に1度の群は1.6倍、2週に1度の群は2倍、全く食べない群は5倍の割合で認知症になるという報告があり、積極的に魚を食べる事が認知症の予防になります。その他高血圧症や、糖尿病や、高脂血症が認知症の危険因子の為、積極的な食事療法が重要です。
最後に理想的な食事内容は、魚を1日1度、緑黄色野菜を1日2度、果物を1日1度摂取する事をお勧め致します(太田2005)。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸が多くなった状態を言い、その原因には尿酸の過剰な産生や摂取、尿酸の排出障害等があります。この尿酸の値が高くなると、尿酸塩が析出し産生され、関節に炎症が起こり、急性関節炎すなわち痛風を起こします。また、高尿酸血症を放置すると痛風以外にも、尿路結石、腎機能障害、心疾患や脳血管障害を起こす原因となりますので、放置しないで早めに治療する事が大切です。高尿酸血症のなかで、痛風発作を引き起こす症例群の大規模な疫学調査の結果、その原因には食事の過剰な摂取による肥満、食事内容、アルコール過剰摂取、運動不足等が要因としてあげられています。
食事療法は、プリン体を多く含んでいる食物を過剰に摂取する事を避ける様にしましょう。具体的には、海老などの甲殻類、レバー等の内臓、カツオやサンマ等を多量に摂取する事を控ましょう。しかし、最近の研究によると、高尿酸血症を予防するためには、プリン体の多いものを控える事よりも、肥満を改善する事が重要である事がわかってきました。何故なら、肥満になると、高インスリン血症の状態になり、その事で尿酸の産生を増加させ、またその排泄を遅らせる事となります。このため、高尿酸血症の治療の第一目標は肥満を解消する事になります。具体的にはアルコールの飲みすぎを控え、外食や油物も控え、早食いや食事時間の不規則を改善し、肥満を解消し予防しましょう。また、激しい運動は無酸素運動となり、かえって尿酸の産生を増加させる為、早足で歩く等の有酸素運動が有効です。
★プリン体ー分解された最終産物が尿酸になります。
高脂血症とは血液中のコレステロール値や中性脂肪の値が高い事を言います。コレステロールの中には、動脈硬化を予防する善玉コレステロールと動脈硬化を進行させる悪玉コレステロールがあります。高脂血症は、この悪玉コレステロール値が高いか、又は総コレステロール値が高い事を意味します。高脂血症等が原因で動脈硬化が進行すると様々な合併症を引き起こします。例をあげると脳梗塞等の脳卒中、心筋梗塞や大動脈瘤、腎機能障害や眼底出血等が代表的な疾患です。
高脂血症の原因には運動不足、食事の過剰な摂取や脂肪の取りすぎ、飲酒の他に、糖尿病、腎臓や甲状腺疾患等があります。また、女性の場合、閉経後にホルモンのバランスの関係から高脂血症になるケースもあります。
今回食事と高脂血症について述べたいと思います。高脂血症に対する食事療法の第1は適切なカロリーの食事にする事です。最近は食生活環境の変化で、インスタント食品や冷凍食品やファーストフード等で知らないうちにカコリーの高い食事を摂取している場合もあります。今一度、食事内容をよく考えて見ましょう。また油料理は1日2品までと決めましょう。肉よりも魚中心の食事内容にし、コレステロールの多い食品(霜降り肉、うなぎ、卵類)は避けましょう。食物繊維の多い野菜、キノコ、海草、こんにゃくはコレステロールを下げます。ビタミン類やカロチンは動脈硬化を防ぎます。適量の果物、イモ類、緑黄食野菜はおすすめです。また、中性脂肪は、甘いもの(果物や砂糖)やアルコールの過剰摂取が問題となります。これらを適量にして動脈硬化を予防しましょう。
脳神経外科の外来診療の内容も、世の中の高齢化の影響を受け、以前は頭痛の患者さんが大半を占めていましたが、最近は年々めまい症の患者さんの割合が増加しています。めまい症には、回転性のめまいと非回転性のめまい(フラツキ感と同じ意味)の二つがあり、いずれの症状も大きな意味でめまい症と呼ばれています。
このめまい症には、生命に危険を及ぼす様な脳腫瘍や脳卒中が直接原因のものと、そうでないものがあります。 今回後者の日常診察時によく見かけるめまい症について述べたいと思います。
めまい症の研究において、脳の左右の側頭葉に一つずつ体の位置を把握する中枢(頭位認識中枢)がある事がわかっています(成富、2009)。この中枢は、絶えず左右の間で連絡を取り合って体の位置の把握をしているようです。高齢者になると、この左右の連絡の速度が脳に虚血性の変化が起こっているために遅くなります。それに加えて疲れがたまったり、睡眠不足の時には更に連絡速度が遅くなる事でめまい症が起こると考えられています。このめまい症の頻度は60歳以上で約30%程度に起こると言われています。
このため、脳の精密検査で異常のないめまい症の場合は、老化の一症状であり、その対処法としては、睡眠不足を起こさない事や根を詰めて細かい作業を長時間しない事等を守って頂く事が大切です。