慢性頭痛


  1. 慢性頭痛にタイプがあるのか?
    慢性頭痛の方は日本で3000万人、そのうちの22%は緊張型頭痛で、8%片頭痛です。
  2. 片頭痛の症状と原因は?
    症状:激しい頭痛と時には嘔吐が加わります。頭痛は、日常生活に支障をきたす程で持続時間は数時間から3日間も継続するタイプもあります。頭痛の発作中は光刺激、音刺激、臭い刺激で痛みが増強します。また、前兆を伴うタイプでは頭痛の20から30分程度前に視野の一部分にキラキラする稲光が出現する閃輝性暗点が出現したり、頭痛発作が起こりそうな漠然とした予兆を訴えるタイプもあります。一般的に、頭痛の際に首を振る事が痛みの為に困難な場合には片頭痛と考えて良いと思います。また片頭痛は後で述べますが、ホルモンのバランスとも関係があります。患者さんの男女比は1:3です。好発年齢は10歳代から60歳代までの病気と考えられていますが、平均寿命の延長でその好発年齢も高齢化している様です。
    原因:なんらかのきっかけで、例えばストレスからの開放(試験の後等)、飲酒、旅行、女性の場合では生理前後のエストロゲンの減少といったホルモンの変化があり、三叉神経から痛みの物質である神経ペプチドが、硬膜の血管に放出されて硬膜の血管に拡張と炎症が起こり、痛覚刺激が脳に伝わり片頭痛となります。頭痛が強い場合は延髄の嘔吐中枢を刺激して嘔吐が起こります。
  3. MRI検査で片頭痛の兆候等はわかるのでしょうか?
    片頭痛はMRIで異常なく、緊張型頭痛と共に機能性頭痛と呼ばれるものです。その他の頭痛、例えばクモ膜下出血や脳腫瘍、脳膿瘍等の感染症等の器質性頭痛との鑑別診断として有効です。
  4. 緊張型頭痛の症状と原因は?
    症状:頭痛は後頭部やコメカミ痛が多く、キリキリする痛み、頭重感、締めつけらえると表現されます。痛みはひどい場合には吐き気をきたすこともありますが、嘔吐はなく一般的に日常生活に支障を来たす程ではありません。
    原因:肩こりや首凝りからの神経痛です。
  5. 片頭痛の対処法は?(患部を冷やす)
    治療はまず、内服薬で頭痛を和らげることから始めます。痛み止めは、副作用の少ない市販薬から開始して、効果が有れば継続して下さい。効果がない場合は、医師処方の消炎鎮痛剤を試して頂きます。更に片頭痛の特効薬のトリプタン製剤へと症状と患者さんの年齢に応じて使い分けます。効果が強い薬は、副作用も注意が必要な為、医師の指示で服用をお願いします。いずれの場合でも痛み止めの服用は飲むタイミングが大切で前兆の時に飲むことが重要です。一般的に、片頭痛は最大限一ヶ月間に8回程度までのため薬を飲みすぎで起こる薬剤乱用性頭痛(月に10日間以上服用の場合起こる)にはなりません。また、随伴する悪心や嘔吐も制吐剤で対処します。
    なお、片頭痛の頻度を減少させる予防薬を服用する事で頻度を減少される事も可能です。
    また、片頭痛は血管の拡張が原因ですので頭部を冷水で冷やすと気分が良いといわれる患者さんもおられます。
  6. 緊張型頭痛の対処法は?(首周りを温める)
    頭は成人で約4kgあり、これは一升瓶2本に相当する重さです。これだけ重いものを支えている為、頭痛の患者さんは、首の細長い女性が多い様です。まず、姿勢を正すことから始めます。また早朝に痛い場合は枕が高すぎるか、硬すぎる事も考えれます。補助的に筋弛緩薬を短期間使用するのも良いでしょう。また、歩行中の姿勢を正す様に、本を上に載せて歩く等の練習も役に立ちます。低血圧症、貧血症も頭痛を起こりやすくするので、無理なダイエットはしない様にしましょう。ストレスとの因果関係があると言われておりストレスをかけない事も重要です。

 

抗痙攣剤と妊娠


妊娠中の抗痙攣剤の服用はこれらの薬の催奇形性から十分に事前の検討が必要です。一般的に全身痙攣等の発作の為に妊娠中や出産中に、胎児や母体に危険を引きこす可能性が抗痙攣剤の催奇形性を上まれば服用が許される事になります。具体的に考えれば正常な出産に際しての奇形の頻度は2~3%と考えられ、抗痙攣剤の種類によって異なりますが、最も安全とされる抗痙攣剤を服用してもこの頻度は2倍から3倍に増加するようです。従って妊娠中に抗痙攣剤を服用する事での奇形の頻度は4%~9%となります。つまり約1/11~1/25の出産で問題となる事になります。

一方、抗痙攣剤服用中でも痙攣発作(発作の重症度に関係なく)が1回以上/年起こる可能性のある症例では、薬を服用する事プラス発作の危険性の2重の問題から医師による妊娠許可の可能性は難しい事になります。

従ってより厳しく基準で症例を限定すると、癲癇の患者さんで痙攣発作のコントロールが3~5年間以上出来ており、なおかつ脳波が正常な症例で上記の内容を十分に理解された御夫婦に限り妊娠が許されると考えます。

 

脳脊髄液減少症について


何かと話題の脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、以前には交通外傷後に起こるむち打ち症の原因ではないかと言われ、ブラッドパッチ(自己血を硬膜外注入)をする事で種々の臨床症状が改善する、いわば究極の診断及び治療法としてもてはやされた時期がありました。今は、その診断法や治療法に疑問視が投げかけられ(東京地裁H20.2.28等)、全ての症例でこの様な事はなく個々の症例で慎重に対処する事が重要の様です。私が個人的に関わらして頂いています交通外傷の事例や又は訴訟問題にも発展しかねない多くの事例は間違った知識と考え方が浸透している事が問題のようです。ここで改めてその知識を整理する意味から診断基準を列挙したいと思います。

日本神経外傷学会の診断基準(自動車ジャーナルNo1742-4頁)によりますと低髄圧症候群の「前提基準」を《起立性頭痛と体位による症状の変化》とし「大基準」を(1)《MRIでびまん性の硬膜の肥厚》、(2)《低髄液圧の証明》、(3)《髄液描出画像所見》としています。そして前提基準1項目+大基準1項目を満たす場合を低髄液圧症候群と診断しています。上記の起立性頭痛とは、坐位及び立位をとると15 分以内に増強するもので、外傷後30日以内に発症します(自動車ジャーナルNo1742-4頁)。

また問題点として、RI脳槽シンチに関してはアイソトープの吸収や排泄の早さに個人差があり、その診断価値はいまだ定まってない事(自動車ジャーナルNo1742-14頁)が挙げられます。従ってRI脳槽シンチは、将来的に上記の「大基準」(3)の内容の変更や、診断基準の大基準から省略される事があるかもしれません。

最後に。当たり前の話ですが、RI脳槽シンチの検査ではアイソトープを髄液内に注入する際に硬膜を穿刺針で破る為、検査後に髄液がもれることは当然の事です。問題はその様な漏れが、交通事故が原因で起こり、なおかつ持続的に髄液漏が起こる事により起立性頭痛が継続して起こっているかどうかが重要と考えます。

 

頭部外傷について


  1. 頭部は外側から頭皮、帽状腱膜、骨膜、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳の順に構成されています。頭部を強打し、不幸にして前記の部位に出血を起こした場合にそれぞれ重大な問題となります。頭部外傷のメカニズムを検討すると①直達外力による外傷と②回転角加速度によるものがあります。①の代表例が頭皮下血腫、帽状腱膜下血腫や骨膜下血腫(いわゆるタンコブ)、頭蓋骨骨折、硬膜外血腫があります。②の代表例が硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷等があります。回転角加速度による外傷とはバイクの転倒、柔道やスノーボードによるものです。
    頭皮および頭皮下損傷:頭皮の外傷には皮膚の連続性が保たれる擦過傷と、連続性が断たれる挫傷、裂傷があります。頭皮下の出血(タンコブ)は頭蓋骨の外側の外傷ですが、重症の外傷でもタンコブを伴っている場合が多く、タンコブがあるから安全とは言い切れません。頭部打撲の場合は頭部CT等の精密検査がやはり必要です。
  2. 頭蓋骨骨折:線状骨折と陥没骨折に分類されます。鈍的な外傷で線状骨折ができ、比較的鋭的な外傷(打撲面積が少ないもの)で陥没骨折が起こります。
  3. 硬膜外血腫:側頭部を強打する事で骨折に伴い中硬膜動脈の破綻が出血源で起こります。通常症状は短時間で悪化しますが、手術により完全回復が期待できます。時間との勝負です。
  4. 硬膜下血腫:脳挫傷によって脳表の動脈や静脈が破綻する事で起こります。受傷直後から意識障害が起こります。また小児の虐待の頭部外傷では最も頻度が高い疾患です。機能および生命予後は合併した脳挫傷の程度により異なります。
    参考:慢性硬膜下血腫ー外傷3週間から3ヵ月後に痴呆症、運動麻痺、尿失禁等の症状が出現する疾患です。受傷当初は頭部CTで異常なく、その後徐々に血腫が形成されて症状が出現します。また高齢者の場合、約50%の方に外傷の既往歴がない方がおられます。この疾患は治る可能性のある痴呆症状の一つですので、検査をし手術をすると機能予後は良好です。
  5. 外傷性くも膜下出血:くも膜下腔の静脈からの出血や、脳室内や脳内出血からの進展で起こります。くも膜下出血単独の場合は、予後は良好な例が多いようです。
  6. 脳挫傷:前頭葉や側頭葉に多く、後頭葉に頻度が少ないようです。脳挫傷の部位や程度で予後が左右されます。

★小児の頭部外傷の特徴

  1. 陥没骨折が多い。
  2. 軽微な外傷から硬膜下血腫が出来やすい。
  3. 軽微な外傷でも嘔吐を来しやすい。
  4. 頭蓋内血腫例で貧血を来しやすい。
  5. 回復は良好の事が多い。
  6. 外傷性癲癇を来しやすく、脳波異常が多い。

★老人の頭部外傷の特徴

  1. 外傷に比べ機能および生命予後が不良。
  2. 脳振盪が少ない。
  3. 脳挫傷を起こしやすい。
  4. 身体の合併症が多い。
  5. 軽微な外傷で性格変化や認知症を進行させる。

 


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