脳卒中*の危険因子には、加齢や遺伝的素因など予防が不可能なものと、高血圧症、糖尿病、高脂血症、痛風等の生活習慣病や飲酒、喫煙等の予防が可能な因子があります。糖尿病の予防には定期的な運動習慣、食物繊維の摂取、脂肪摂取の抑制が重要す。 *脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血の総称
②糖尿病と食事
糖尿病とは、食事の量が多く、運動不足の為に血糖値が上昇しているにも関わらず、膵臓から出るインスリンが効率的に使われず、膵臓に負担がかかり、結果として血液中に糖分が余っている状態です。この血液中の余分な糖分が悪影響を引き起こします。具体的には微小血管炎を起こす事で、脳梗塞、心筋梗塞、網膜症、腎不全、末梢神経障害の危険性が高まります。
食事療法のポイントは、1度にたくさんの量の食事は控えて、腹八分目を心がけ膵臓に過度の負担をかけないようにする事です。具体的には、食事量を3食同じくらいに分けて摂取します。朝食を多めにして、昼と夜と食事を少なくします。朝食を抜くと、体が飢えに備えて脂肪を蓄積しようとし、肥満の原因になります。また、ながら食いは結果的に食べ過ぎになります。更に、早食いやまとめ食いも良くない事です。ゆっくりよくかんで食べましょう。
食品もGI値(グリセミックインデックス=ブトウ糖を100とした時の、食物100gあたりの血糖上昇率)の低いものを選ぶ知識を持ちましょう。主食では、高い順からパン>白米>パスタの順です。
また野菜を多めに取る様にしたいですが、最近の傾向として、御飯よりおかずを多く取りすぎる傾向にあるようですから、副食は1食1皿として、御飯(適量)を食べるようにして下さい。蛋白質は、魚や大豆、脂身の少ない肉からとりましょう。脂肪の摂取は動物性脂肪を減らし、植物性脂肪や魚から取りましょう。油を使った料理は1日2品までとしましょう。
お菓子や飲酒も控え目にして下さい。低脂肪の牛乳や適量の果物は食事と一緒にとらず、間食で摂取して空腹感の緩和に努めて下さい。外食などでは食べ残す勇気も必要です。定食やどんぶり物は御飯を1/3ほど残して下さい。
追記ー運動療法は、毎日6000歩~8000歩歩く事が理想です。
脳卒中*の危険因子には、加齢や遺伝的素因など予防が不可能なものと、高血圧症、糖尿病、高脂血症、痛風等の生活習慣病や飲酒、喫煙等の予防が可能な因子があります。後者の予防には、規則正しい生活、正しい食事の取り方、運動療法が重要です。
今回から4回に分けては、上記の予防できる危険因子と食事の関係について述べてみたいと思います。
①高血圧症と食事
高血圧症の定義は、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」によれば、正常血圧は収縮期血圧が130未満かつ拡張期血圧は85未満で、高血圧症は140以上又は90以上と従来の数値よりきびしいものとなっています。この事は、より厳密に脳卒中や虚血性心疾患の分析をした結果、その有病率が上昇する事例から割り出されたもので、信頼性の高い数値です。
高血圧症の治療は、まず食事療法が基本です。塩分の取り過ぎに注意して、栄養バランスを考え、食べ過ぎや、飲み過ぎに注意をして、ぜひ禁煙もしましょう。具体的には、日本人の平均塩分摂取量は13gです。高血圧症の方はこの摂取量を約半分の6~8g程度に控えましょう。また、塩分の摂取は全てが「塩」からものではなく、加工食品やみそ、醤油、ソース等にも含まれます。この為加工品を控え目に摂取し、味噌汁は1杯/日以下、麺類のつゆも残して下さい。例えば、干し魚より新鮮な魚を選び、塩や醤油を控え目にして、柑橘類、生姜やしそなどの香味野菜やカレー粉や唐辛子を利用してください。野菜や果物には、カリウムを多く含んでいます。カリウムは食塩の主成分のナトリウムと一緒になって体外へ排出させる働きがあります。野菜を毎食しっかり取りましょう。また、果物は糖分に注意をして適量を食べる様にしましょう。牛乳も血圧を下げる効果のあるカリウムやマグネシウムを含んでいます。高脂血症に注意をする意味から、低脂肪牛乳をしっかり取りましょう。
*脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血の総称
日本の気候風土は、地球温暖化によって温帯性気候から亜熱帯性の気候へ変わってきているようです。特に夏は高温多湿が顕著となり、街中ではアスファルトやコンリートがある他、緑の不足から人間の体温以上に気温が上昇する日も、年に数日数える事が多くなっています。また、冬は暖冬であっても広島市の年最低気温は、雪の降る日には0℃近くに低下する事もあり、真夏と真冬の温度差は35~37度程度ある事になります。
この様な環境の中で一年中同じ降圧剤で経過をみる事は、軽症の高血圧症の方は勿論、重症の高血症の方でも困難となっています。当院での一例をあげますと、65歳の脳梗塞後遺症の患者さんで、冬の間は降圧剤を3種類服用されていますが、春から夏にかけて徐々に収縮期血圧が100近くまで下降する為3剤を2剤や場合によっては1剤に減量する事を経験します。
最近は家庭血圧測定の重要性を叫ばれ、ほぼ患者さんに浸透しつつありますが、今後季節によって薬を増量や減量する事が一般化すると、益々家庭血圧の重要性が増すものと考えます。
急性硬膜下血腫は、一般的には頭部外傷直後から数時間以内に発症します。しかし外傷がなく、原因が不明のいわゆる急性特発性硬膜下血腫の病態がある事も知られています。例えばMizushima(Neurol Med Chir, 99)らは外傷、脳の表面の皮質動静脈奇形、血管腫、動脈瘤、また患者さんの出血傾向と関係ない急性特発性硬膜下血腫の症例が54例あったと報告しています。石井(脳神経外科,04)らはこの病態の症例報告の結語として脳梗塞、心筋梗塞等の動脈硬化性病変が基礎疾患にあり、それに加えて易出血性を助長する薬剤が投与されていた事が血腫発生に影響を与えるとしています。また、他の報告では出血性素因の一つとして血友病の患者さんにおける急性硬膜下血腫の症例でBalak(Surgical Neurology, 97)らは、成人発症の急性硬膜下血腫の半数例が外傷との因果関係はなかったと報告しています。
以上稀な病態ですが、御紹介します。