痴呆症とは脳が正常の発達や発育をした後に記銘力が減退して記憶力障害を主体として見当識障害(時、場所、時間がわからない)や知能低下等が起ってくる状態です。
診断には類似の症状を示す疾患の鑑別が必要です。例えばせん妄は高齢者に多く一日の内で意識障害の程度の変化が激しくまた突然起る事で鑑別が可能です。他高齢者のうつ病も同様に症状出現が急で症状の原因(人間関係やストレス)がはっきりしている事多い様です。
痴呆症の原因は全身性及び代謝性疾患のほかに中枢神経が原因の場合アルツハイマー型痴呆症、前頭側頭葉型痴呆症(ピック病等)、脳血管性痴呆症、水頭症、慢性硬膜下血腫等が代表的な疾患としてあげられます。左記の疾患中で水頭症及び慢性硬膜下血腫は手術によって回復が可能な疾患です。アルツハイマー型痴呆症は原因不明で両側海馬~頭頂葉が萎縮する最も頻度の高い痴呆症です。ビック病はやはり原因不明で前頭葉等が萎縮する疾患です。脳血管性痴呆症はビンスワンガー型痴呆症に代表され脳梗塞が大脳半球に起り痴呆症が出現します。痴呆症の場合脳の画像診断及び知能テストで早期診断が可能でその場合は痴呆症の進行をおくらせたりまた極初期の場合は改善する様な内服薬があります。
癲癇とは脳内に発生する生理的な電気信号の異常で意識がなくなったり、また痙攣発作を引き起こす状態です。患者さんは発作の前触れを経験したり、また突然倒れる様な状態等を経験します。発作の継続時間は数秒から数分間で、発作が強い場合はその後で意識消失が継続します。
診断にはヒステリー、脳血管障害、心臓疾患や薬物中毒による意識障害ではない事の鑑別診断と脳波での癲癇波の確認が必要です。
発作の予防は第一に薬物療法による痙攣発作のコントロールが大切です。薬物でコントロールできればその後一般的に5年間抗痙攣剤を服用して頂き、脳内にある痙攣発作の焦点である電気的な異常経路を断ち切る事で完治を期待する事が出来ます。また女性の場合は妊娠と言う問題がありますので思春期の時期に出来るだけ癲癇を治す努力が必要です。成人女性になると妊娠しても出来るだけ出産に問題とならない様な薬物を選択する必要性があり、更に実際に妊娠した場合は患者さんは脳外科医や産婦人科医との密な関係が必要となります。
薬物療法が第一次ですが治療中には患者さんにも注意が必要です。それにはライフスタイルを出来るだけ癲癇が起らない様な規則正しい物にし、また睡眠不足にならない様にして、煙草やお酒は控え、テレビゲームやパチンコ等目に刺激的な事を避ける事が大切です。
ある日の診察状況:患者さん及び家族の方が来院「私は呆けた様です。X月X日のX時から翌朝まで記憶がありません。また家族が言うにはその間同じ事を繰り返し質問しました。」以上は一過性全健忘症の方が来院時に言われると典型的な状況です。この疾患は一時的に記憶力だけ侵される病態で、頭部のMRIやCT検査では全く異常所見を認めないものです。通常の発作継続時間は数時間ですが、長い症例では3日間程度記憶が全く頭の中に入らない症例もあります。患者さんは自分の名前や年齢や家人の顔等はよく分かりますが、新しい事柄が全く記憶に残らない状態です。その為まわりの状態が把握できず何回も同じ質問を繰り返します。またこの発作中の記憶は全くない状態です。まわりの人は全く人格が変わり呆けたのではと勘違いします。しかし発作中は字を書いたり、車を運転する等は出来る状態です。発作の原因については現在不明ですが記憶力の中枢の海馬の一過性の血流障害と考えられています。また発作の誘因は特にない事が多く(66%)、他誘因として激しい運動や怒り、悲しみ等がある様です。一般的に再発は稀で治療や予防の必要性はない様です。
加齢(老化)による物忘れを良性(正常)の老年性物忘れといいアルツハイマー病の物忘れとは次の様な点で異なります。通常の物忘れは体験した事の一部分を忘れる(何処に物を置いた事とか人の名前等)にすぎない様です。また物忘れの頻度が増えても物忘れを自覚している事が特徴です。しかし、アルツハイマー病に代表される痴呆症の場合は体験した事の全体をすっかり忘れ(エピソード記憶の障害)、そして物忘れにとどまらず見当識障害(時間や場所がわからない)や判断ミス等の知能障害へと進行し更に自分の物忘れや判断ミスに対して自覚症状が乏しい事も特徴的です。したがって家人や周りの人が初期症状を見つける場合が多い事になります。