院長コラム:めまいの代表的な疾患
はじめに:めまいとは自分の周りの物が回転したり、動揺したりまた自分自身が船酔いの様な状態の総称です。めまいの原因は頭蓋内病変等の中枢神経系疾患と耳鼻科疾患の末梢神経系疾患と全身疾患の3タイプに分かれます。原因は多岐にわたりますが代表例を列挙します。
- 中枢神経系疾患
脳血管障害の代表例として椎骨脳底動脈循環不全症があります。この病態は脳の中の体のバランスを司る脳幹部及び小脳へ分布をしている血管である椎骨動脈及び脳底動脈の血流不全(流れ難い)為に起るものです。血流不全には血管の動脈硬化による血管の走行の蛇行から脳梗塞の前段階の血管の狭窄症や閉塞症が原因で起ります。後者の場合は命に関わる事もありますので、めまいが継続する場合には一度MRI等で脳血管の状態を調べる必要があります。なお上記の血管の動脈硬化がMRI上軽症の場合でも他には原因なく、めまいを自覚されるケースによく遭遇します。その場合は推定ですが脳底動脈や椎骨動脈から分枝する穿通枝(長径 200Å程度の血管)の動脈硬化やまた先天的に穿通枝の本数が少ないケースがあるのではと推定しています。この場合は通常脳梗塞へ悪化する可能性は低いようです。その他大脳半球の特に前頭葉の脳梗塞でも、めまいを自覚する場合はあります。
また別の原因として聴神経腫瘍や脳幹部腫瘍等脳腫瘍が原因の場合もあります。 脳腫瘍の早期発見の場合に完治する場合が多いですので、めまいが継続する場合は精密検査を受ける事をお勧め致します。
- 末梢神経疾患
めまいの原因の末梢性疾患(三半規管)としてメニエール病があります。この病気は、めまいはメニエール病と言葉の語呂の良いので一人歩きして、めまいなら何でもメニエール病と考えがちです。実はある統計によると一般の外来で0.6%、めまい専門の外来でも5%程度と頻度の少ない疾患です。またメニエール病は原因が内耳のリンパ浮腫である事から回転性のめまいに必ず伴う症状としては耳鳴りと難聴があります。なお、めまいは片側でも両側でもかまいません。
他に蝸牛の耳石の移動する事が原因の発作性頭位変換性めまい症があります。この病態はある一定の姿勢になった場合例えば左下向きに寝た場合等に回転性のめまいが起る症状です。
- その他
甲状腺機能低下症、貧血等でも、めまいが起る場合があります。
上記何れも場合も継続するめまいにはまず頭蓋内の精密検査をされ脳血管障害や脳腫瘍等がない事を確認する事が大切です。
何処か気になり心配になる頭痛
緊張型頭痛とは肩や首筋の筋肉がこる事が原因でおる頭痛です。頭痛の原因の70~80%を占めます。緊張型頭痛は、筋緊張型頭痛や大後頭神経痛と同義語です。肩こりの原因については、重い頭を細い首で支えている為や頚部の筋力の問題や姿勢、筋肉の血流障害(脳卒中とは無関係の)或いは精神的なストレス等が相互に作用して肩こりが起こります。その関連痛として緊張型頭痛が起こります。
後頭部やコメカミが痛い、頭のてっぺんの方が痛い等痛みの箇所は多種多彩です。また痛みの方も押さえつけれる様な、きりきりする痛み、鉢巻を巻いた様な痛み等その表現も多種多彩です。痛みはストレスやデスクワークや疲れが原因ですから何時とはなく始まる事が特徴的です。また朝よりも夕方に多いタイプです。また休みの日等には痛みを忘れている事も特徴的です。しかし痛みがひどくある程度長時間に及べは吐き気や嘔吐を伴うがあります。これは痛み刺激が脳の延髄にある嘔吐中枢を刺激するためと考えらていますが、念のため頭部MRI やCT検査が必要と考えます。
治療法は肩こりが原因ですので肩こりをほぐすマッサージや入浴、頭痛がひどい場合には鎮痛剤や筋肉のこりや緊張をとる意味で筋弛緩剤や安定剤も効果を示します。
治療薬について鎮痛効果は少ないものの副作用が少ない市販薬(イブ、セデス、ナロンエース等)から医師が処方する消炎鎮痛剤更にトリプタン製剤とあります。まず、市販薬を頭痛の起こりそうな前兆の際に服用され頭痛がコントロールできれば一番良いと考えます。市販薬が効果がない場合や、片頭痛の診断等に迷った場合は専門医(脳神経外科、神経内科)に相談され自分に合った薬がどれかを試してみる必要があります。片頭痛持ちの私の経験では片頭痛は休みの日、寝すぎた日、旅先、一年中で一番さわやかな晴れた春や秋の日等に起こりがちです。一日を台無しにすることない様に正確な診断と適切な内服薬を服用される事を切に希望します。
なお片頭痛の痛みが強く頻度も多く上記の内服薬があまり効果がない場合は頭痛の予防薬を服用される事をお勧め致します。予防薬としてある種のCa拮抗薬等があります。この場合予防薬ですから片頭痛の起こりそうな時期(季節の変わり目や女性なら生理前後の時期)に一定期間服用する必要があります。片頭痛の予防が効果的な場合があります。
最後に片頭痛は思春期から起こる頭痛でホルモンのバランスが関与している事は確実ですが原因はつかめていません。平均60歳頃には片頭痛が自然に起こらなくなります。気長に仲良く付き合ってください。
片頭痛の治療はまず片頭痛を正確に診断することが重要です。前にお話した頭痛の特徴的な所見が半数以上あればまず片頭痛と考えてOKです。しかしそんなに単純な頭痛のみでなく、片頭痛と緊張型頭痛とが合併するような混合型頭痛が存在することも事実です。その場合患者さん御自身がこの頭痛は片頭痛、この頭痛は緊張型頭痛と自己診断さえるか、或いは専門医に尋ねその頭痛に合った治療を選択します。なお、緊張型頭痛については後日お話します。
片頭痛の治療の基本は痛くなる前にモグラ叩きの様に薬を服用する事が一番大切です。多くの片頭痛の患者さんの場合若い頃から経験上片頭痛の起こる前の前触れ症状を自覚しておられると思います。内服薬はこの時点、すなわち痛くなる前に薬を服用する事が肝心です。この様な服用方法でも決して薬を飲み過ぎる事にはなりません。何故なら頭痛学会が注意を促している薬剤乱用性の頭痛は、鎮痛剤を月に10日以上服用すると起こるようです。片頭痛の場合はその頻度は週に2回で月に8回程度以上は起こりません。安心してしっかり薬を服用してください。